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「自分の就活が終わったら、告白しようと決めていたんです」
「誰に」
「タケヨシさんに」
「え、ちょっ、こく……」
告白なんてされたこともないし、される予兆も無かったので、言葉が出なかった。
「タケヨシさんは、どこに就職します?」
「あ、えっと、家業を継ぐので、都内の実家で」
「そうなんですか? 私は隣の県で就職するから、やっぱり、遠距離恋愛になっちゃいますね」
「ああ、他県で……ん、遠距離恋愛?」
「え、私じゃダメですか?」
「そっ、え、は?」
「卒業後に遠距離恋愛で良ければ、付き合ってくれますか?」
もし俺に、こんなこと相談できるような友達がいたら、「そんなヤバい子はやめておけ」と言われただろうが、美沙の風のような涼しい声が、イライラする湿気を蹴散らしていった。
「これから、どこに行く?」
モンブランを平らげて満足そうな美沙を見て言った。時計は、もうすぐ十一時になるところだ。
「タケヨシさん、『沈丁花』に行きましょ」
「行くんですね」
俺のセリフの後、二人で笑い合った。
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