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タケヨシさん、「沈丁花」に行きましょ。
告白を断らなかったという流れで付き合うことになった翌日、昼休みに美沙が俺に言った。
沈丁花とは、大学の近くにあった洋食レストランだった。三月になると店の前には沈丁花の花が咲いていて、女の子連れか、女の子が一緒のグループでしか入れないような、お洒落なレストランだった。
「行くんですね」
たどたどしい俺のセリフに、その時の美沙は笑っていた。
卒業してまだ四ヶ月しか経っていない。周りの風景も変わったところは無かった。
沈丁花には、美沙と付き合い始めてからよく来るようになったので、店長さんとは顔見知りになった。
「あ、タケちゃん。夏の限定メニューあるよ」
「冷やし担担麺、食べるか」
夏は冷やし中華だとか言われるかもしれないが、この二年間、沈丁花の冷やし担担麺を食べると、夏を実感できるようになっていた。
「デザートも夏のメニューにしようかな」
「今さっきモンブラン食べたのに?」
「痩せた分を取り戻すんだよ」
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