ミントな君

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 確かに、就職してから美沙は痩せていった。遠距離だったから、二、三週間に一度のペースでしか会えなかったが、会う度に痩せていると分かった。顔色もどんどん悪くなっていた。 「タケちゃん、女性が太っても痩せても気が付かなさそうなのに、すごい。嬉しい」  最初は、そんな呑気なセリフで笑っていた美沙も、ゴールデンウィークに受けると意気込んでいたレーシックの手術で良い効果が無かった事で、落ち込み始めた。元の視力より悪くなってしまったと言って、六月は落ち込んで会ってくれなかった。  俺からはもちろん、周りからも、「無理しないで」という言葉をかけられ、美沙は六月末に会社を退社した。頑張って就活して入社した念願の企業だっただけに、落ち込みは大きかっただろう。  だから、今日は少しくらいは我がままを聞いて楽しく過ごせたらと思っている。 「レモンソーダゼリー」 美沙が俺に言った。 「すいません、レモンソーダゼリーを一つ」 店員さんに俺が注文する。 「あ、二つお願いします」 「二つも食べれるか?」 「タケちゃんも食べるんだよ。お願い、せっかくだから」 「じゃ、じゃあ、二つで」  まあ、さっきモンブランを断ったし、今日は美沙のお願いをなるべく聞いてやらねば。 「今日は、これから行きたいところあるか?」  レモンソーダゼリーを食べながら聞く。 「うーんとね……あ、見て。中に何か入ってる。ハーブ?」 「ミントだね。まあ、どんな味のゼリーに入ってても喧嘩しないのは、ミントくらいだろう」 「スイカやメロンだと、主張し合って喧嘩しそうだね。だから、中に入ってるのはブレないキャラなんだね」
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