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「そうだな。で、行きたいところは?」
「先を急ぎ過ぎだよ、タケちゃん。少しまたドライブしよう」
美沙は、最後に残しておいたミントを口に入れて「うん、やっぱりミントだ」と感想を呟いている。
去年の「付き合って一年記念」では、美沙は一ヶ月も前からディズニーランドに行く計画を立てていて、乗り物に乗る順番など細かく決めていた。俺と別れないのは、ディズニーランドに行きたいからか? と疑うくらい、楽しみにしていたのだ。
だから、まさか一年後の美沙と、こんなにものんびりした記念日を過ごすとは思ってもいなかった。まあ、そのうち元気は戻って来るだろう。元から美沙は元気の塊みたいな子だ。今は人生の壁にぶち当たって落ち込んでいるだけだ。誰にでもあることだ。来年の記念日になったら、またディズニーランドへ行きたいと言い出すだろう。
沈丁花から出て、美沙の手を繋いで車の助手席に座らせる。さっきまで涼しい店内にいたから、サウナに近い外気にさらされると、途端に体が蒸される。
「あれ……」
「どうしたの、タケちゃん」
「いや、なんでもない。とりあえず、港公園に向かおう」
「やった!」
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