ミントな君

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「タケちゃん、右に曲がって」  美沙が助手席で俺の肩をつついた。 「右に曲がると何があるんだっけ」 「カフェがあるんだ」 「それは、助かる」  朝十時の待ち合わせで今は十時二十分。それでも七月の太陽は容赦なく、そろそろ冷たい飲み物でも欲しいところだった。 「ケーキ食べようね。モンブランがいいな」 「この時間からケーキ食べるのか? しかもモンブラン」 「どうせなら、ほら、お店のおすすめを食べるんだよ。タケちゃんも食べなよ」 「いや、俺はいいや」  美沙の弾む声に冷静に返す。  カフェの駐車場に車を停めた。この辺りの道は、二人で何度かドライブしていたけど、こんなカフェがあるなんて気が付かなかった。 「タケちゃん」  美沙が手を差し出してきて、二人で手を繋いでカフェに入る。  淹れたてのコーヒーの香りが迎えてくれる。他にお客は誰もいなかった。 「もしかして、私たちが一番?」 「うん、そうだよ。良かったな」  美沙は、席に着くまで俺の手を離さない。 「レーシック、上手くいかなかったなら、もう一度病院に相談してみたらどうだ? 眼科も付いて行ってやるよ」 「ううん、大丈夫。そのうち新しい眼鏡買うから、それまでずっと手繋いでくれる?」 「ああ、うん。まあ、別に眼鏡買ってからでも繋ぐけど」  言った後、頭がカッと熱くなった。付き合って今日でちょうど二年なのに、今でも照れるなんて、きっとこの数か月間続いた遠距離恋愛のせいだ。
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