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コロシヤは泣いている。
ルーナの剣がオニビトの首に触れた。
その瞬間、オニビトは婚約者の娘に人であった時と同じ笑顔を向けた。
「愛しテイる、ずット……」
娘が思わず手を伸ばそうとした瞬間、ルーナの剣がオニビトの首を切り落とした。
笑みを浮かべたまま、ごとりとその首が地面に落ちた。
「あ、あ……、いやぁぁぁぁ!!」
エノオノーラは泣き叫ぶ娘を抱きしめた。
なんて、なんて、悲しくて、身勝手な男なのだ。
もう人には戻れぬというのに、何故、綺麗な思い出として娘の中に残ろうとしたのだ。
これで、この娘はルーナを憎まねばならなくなった。恨まねばならなくなった。
いつ、この悲しみに終わりがくるというのか。
「……エノオノーラ、彼女を頼む」
先程と同じ言葉をルーナは口にした。
「ルーナさん……」
オニビトの首を切り落とす瞬間、その冷たいアイスブルーの瞳には確かに悲しみが宿っていた。
ほんの一瞬、手のひらに乗せた雪の結晶が溶けて消えてしまうような、わずかな時間ではあったが。
コロシヤの少女は今日も泣いている。
完
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