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「宇宙で泳いでるみたいだね」
「ああ、宇宙で泳いでるみたいだ」
私の想像は、果てしない宇宙の底無しに行く。
「でも、広過ぎてちょと怖くなるって思う」
「大丈夫だよ。一人じゃない」
二人一緒。
私は少しだけ冷たい手を布団の中から出して、隆司君の身体にしがみつく。折角毛布で隠した肌が露になって、自分の柔らかい部分が隆司君にくっついても、隆司君は全部受け止めてくれる。
「雨が降っているからかな、いつもより箍が外れるんだ」
私は、可笑しくなって小さく笑う。愛おしさが込み上げた。こんな静かな二人だけの時間がずっと続けばいい。
閉じた瞼の奥に、宇宙を泳ぐ二人の姿があった。
明日の朝はきっと日常に戻ってる。宇宙の欠片もない朝ごはんを食べて、いつものように行ってきますを交わす。隆司君はスーツを着て満員電車に乗る。私は自転車で仕事に行く。いつもの日常、いつもの生活。
わかってる。これが束の間の夢で、直ぐに覚めて現実に戻っちゃうって。
それでも、それでも...。
「ちゅう、する?」
隆司君の唇が私の返事より先に私のと重なって、深くなってぷはって声が漏れた。
いつもの日常、いつもの生活、宇宙遊泳。
現実も非現実も、全部、ふたり一緒。
(END)
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