2人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、幸子の得意分野、妄想の時間だよ。目を閉じて」
「なにそれ、怪しい遊び?」
口元が笑ってしまいながらも、目を閉じる。
「そう。怪しい遊び。この遊びは二人だけの秘密だよ」
閉じた瞼の奥でも、隆司君が私と同じ顔をして笑っているのが想像できた。
「わかった。誰にも言わない」
言えるわけがない。こんな恥ずかしい遊び。
「空には満天の星。見たこともないほどの星が夜空に広がってる」
隆司君の腕に抱かれながら、私の頭の中には満点の夜空が広がってる。私の得意分野は発揮された。
「真下には、鏡のような湖が広がってる」
満天の星空が、足元にも広がってふわっと身体が浮く。
「すごい! 宇宙みたいだ!」
ふっと声を漏らす隆司君の腕が、私に巻き付いた。
宇宙の中でふわっと漂う私と逸れないように、隆司君がぎゅっと私を抱きしめる。
「多分、地面と夜空の境目はない」
私の胸は締め付けられて、息が止まりそうだった。
”ざぶん。”
確かに、今、静寂で神聖な宇宙の真ん中に、二人で飛び込んだ。
キラキラした星が浮ぶ真っ暗な夜空。
広大な地の果てにあるのは、地平線なんかじゃなかった。
境目はとっくに宇宙に溶けて消えて無くなっていた。
私たちは夥しいほどの星の光と共に浮び、宇宙に抱かれる。
私たちは宇宙で泳いでる。
最初のコメントを投稿しよう!