宇宙遊泳

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「じゃあ、幸子の得意分野、妄想の時間だよ。目を閉じて」 「なにそれ、怪しい遊び?」    口元が笑ってしまいながらも、目を閉じる。 「そう。怪しい遊び。この遊びは二人だけの秘密だよ」  閉じた瞼の奥でも、隆司君が私と同じ顔をして笑っているのが想像できた。 「わかった。誰にも言わない」  言えるわけがない。こんな恥ずかしい遊び。 「空には満天の星。見たこともないほどの星が夜空に広がってる」  隆司君の腕に抱かれながら、私の頭の中には満点の夜空が広がってる。私の得意分野は発揮された。 「真下には、鏡のような湖が広がってる」  満天の星空が、足元にも広がってふわっと身体が浮く。 「すごい! 宇宙みたいだ!」  ふっと声を漏らす隆司君の腕が、私に巻き付いた。  宇宙の中でふわっと漂う私と逸れないように、隆司君がぎゅっと私を抱きしめる。 「多分、地面と夜空の境目はない」  私の胸は締め付けられて、息が止まりそうだった。    ”ざぶん。”  確かに、今、静寂で神聖な宇宙の真ん中に、二人で飛び込んだ。  キラキラした星が浮ぶ真っ暗な夜空。  広大な地の果てにあるのは、地平線なんかじゃなかった。  境目はとっくに宇宙に溶けて消えて無くなっていた。  私たちは夥しいほどの星の光と共に浮び、宇宙に抱かれる。  私たちは宇宙で泳いでる。
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