宇宙遊泳

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 情事の後のピロートークが好きだ。特に、こんな雨の音を二人聞きながら、自分たちのことを話すのは特に好きだ。いつもより饒舌になる自分が心地よくて、この広い世界に二人だけ存在してる気になる。  話す内容は、何でもないことだ。何が好きだとか、苦手だとか。テレビの番組や、最近気になることや、バス停で会った不思議な人の話とか、何の意味のないこと。  何の意味もないこと。それでもそれは私にとって意味のあること。  その日はなぜか、旅行をするならどこに行きたいかの話になって、隆司君は少し興奮していた。 「ウユニ塩湖に行ってみたいんだ。小さい頃に図鑑で見てね。それからずっと憧れていた」  ウユニ塩湖?  心の中で反芻する。恥かしいのだけど、私はあまり物を知らない。物を知らない私に、ウユニ塩湖を想像できる術はなく、ただ、”塩湖”だけを感じ取る。  塩の湖。そんな湖がこの世には存在するんだ。ってなぐらいに思った。 「ふーん。どうして、塩の湖に行ってみたいの?」  何も纏っていない身体を布団の中で半回転させ、あなたの方を向いた。いくら全てをさらけ出した仲でも、たとえ薄暗い部屋だとしても、肌を堂々と見せるには抵抗がある。気付かれないように毛布を引き寄せて胸を隠した。 「宇宙遊泳したいんだ」 「宇宙遊泳?」  雨の音が静かな夜に溶け込んで、不思議な話をしてしまう私たちを包み込んでいる。こんな日はわかる。今夜は、否応なしに素敵な夜になってしまう。  隆司君の次に来る言葉に期待した。
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