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ダイビングの後に行くところは決まっている。
カズが何と言おうと一人で行く。
小さな花束を買って。
買った花束を部屋の中に持って入ることはできないから、いつも、どなたかにあげてくださいとナースセンターに渡す。
白い部屋だ。壁、天井、床、そして、シーツ。
そして、すっかり日焼けも抜けて、白くなってしまった拓海が眠っている。意識を失ったまま、たくさんの管に繋がれて。
細い、骨が浮かび上がった腕。私を抱きしめた力強い腕はもうない。
「拓海」
小さな声で名前を呼んでみる。
ピクリともしないで眠っている。
「私ね」
返事をくれる人はいない。
聞こえるのは拓海の呼吸音だけ。
シューシュー。
白い部屋なのに、まるで、深い海にいるような気がした。
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