プロローグ

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プロローグ

 たった今、最期の一服を盛った。  ガラスの小瓶から、ぽとりと雫が落ちる。  朝日を受けたそれは、艶やかな光を放ち、夫人の潤んだ瞳へと映り込んだ。  そして、静かに着水すると、怪しげな波紋を広げ、紅茶の透明度まで溶け込んでいった。  口元を両手で覆うも、喜びを隠し切れない。  梅雨時には珍しく、この日は晴天に恵まれた。  「まるで、新たな門出を祝福してくれているようじゃない」  夫人は、足首まで丈のあるフレアスカートの裾をつまみ、長い髪を振り乱して、狂ったように踊った。  清々しい朝に反して、その光景は異様だった。
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