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5
例の雫を、初めてカップへと垂らす瞬間は、息が詰まるほど緊張した。
悟られてしまっては元も子もない。
「朝食時か、それとも夕食後か。色の濃い、香りの強い紅茶は、どんなものが適しているか」
身につける洋服やアクセサリーを選ぶ以上に時間をかけて、じっくりと吟味した。
考えた末、ウバに溶かして、朝食と一緒に出すことに決めた。
思えば、これまでの人生において、何かを成し遂げたいと自ら行動したことは一度もなかった。
夫殺し。
これが、夫人が生まれて初めて明確に示した意志だった。
しかし、事は拍子抜けするほど、すんなりと進む。
夫はトーストとスクランブルエッグ、ウインナー、十種類の野菜を使ったサラダなどを次々と口に運び、最後に一気に紅茶を流し込むと、いつものように出勤していった。
あっけにとられた夫人は、腰を抜かし、ははっと自分の肝の小ささを嘲笑した。
それからは、日課として、流れるように紅茶を用意できるようになった。
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