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──それから、一年後。
静かな夜だった。
まるで外界とは切り離されたような静けさ。
始まりは、孤月浮かぶ夜。
私たちは手を繋ぎ、ゆっくりと歩いていく。
見上げる空に浮かぶのは、明るい月。未来を優しく照らすような、穏やかな光が降り注いでいる。
あの日に見た孤独な月は、以降見たことがない。
あなたは私の側にいる。今日も、明日も、明後日も。そして、その先の未来さえ──。
「急に笑って、どうしたの?」
「あなたと出会った日のことを、なんとなく思い出して」
「あぁ、僕たちの運命の出会い?」
運命だなんて、安っぽい言葉だと思っていた。でも、そんな考えはとうの昔に捨てている。
「そう。運命の出会い」
顔を見合わせ、互いに微笑む。
あなたのその笑顔が、それを信じさせてくれるのだ。
私たちはきっと、ずっと、ずっと、一緒にいる。
「なぁ」
彼の腕の中では、あの日のキューピッドがゆるりと微睡んでいた。
了
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