知り合い以上友達未満

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優作の笑いがひと段落して、彼が再び食事に集中し始めると、千晃は時折彼に視線を向けながら、スマホのゲームをして時間を潰していた。 「あの子いるね」  話題に振るつもりなんてなかったが、顔を正面に向けて視線を送ることを拒んでいても、彼の双眸の動きが青年を映したいと訴えている。このまま気づかないフリをしてやり過ごそうと思っても、優作の細かな仕草が気になって千晃は放っておくことはできなかった。 「あの子って……?」  青年のことを話題にあげると分かりやすく眉がピクリと上がり、反応を示している割には、白を切る姿がいじらしい。 「優の一目惚れした子」 「っ……⁉ げほっ……げほっげほっ……はあ⁉」  何事にも関心が薄くて、何処か冷めているような優作が手に取って分かるように動揺している。  噎せ返った優作は、即座に手元にあったお冷を飲むと深く息を吐いた。先ほど揶揄われたお返しと思って触れた話題がまさか効果抜群だったとは思わず、わかり易い反応を見せてくれる彼が面白い。 「別に好きというか、ちょっとタイプで気になるだけだし……」  正直に話すのが恥ずかしいのか、目を伏せながらもカレーを口に運ぶペースが速くなり、ハムスターのように頬袋に口に含んだカレーが溜まっていく。 「それを好きって言うんだよ。気になってるなら話し掛けてみたら?案外、直ぐに仲良くできそうじゃない?」 「お前じゃないんだし、そんなホイホイ話し掛けられるかよ」  本当は話し掛けたい癖に、恋愛に関しては奥手なのか、なかなか行動に移さない彼が焦れったい。いつものお人好しで自分が今から青年の所に話し掛けに行って仲介してあげようか。なんて考えてみたものの、そんなことを口走って、鬱陶しがられるのは目に見えていたし、そもそも千晃自身が乗り気じゃなかった。 「それは残念……。あの感じなら、優でも話しやすそうと思ったんだけどなー…」  優作の恋が成就するかなんて神のみぞ知る話ではあるが、青年の雰囲気からして話し掛ければ答えてくれそうではある。 残念だなんて言いながらも積極的ではない優作に安堵している気持ちに、自己嫌悪に陥ったところで、向かい側から大きな溜息が聞こえてきた。 もしかして、今の気持ちを悟られてしまっただろうか……。 表情に出さないように意識はしていたものの、優作の憂鬱そうな溜息が自分に向けられたものではないかとドキリとする。   しかし、そんな千晃の不安はすぐに杞憂に終わった。どうやら溜息の原因は千晃にあるのではなく、彼の背後から迫りくる人物によるものだと察した。
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