青空に雷鳴

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 気遣うような声色で言われて、内心戸惑う。そんなに、沈んだ様子に見えたのだろうか。いまだにまったく哀しみというものを実感できていないのに。骨の左側をそっと摘まみ直す。今度は何の問題もなく運ぶことができて、骨壺の空間が満たされていく。無心で箸を運ぶごとに、壺の底は赤褐色に埋められていく。それとは対照的に、胸のあたりから意識が剥がされて、自分の動きが機械的になっていくのがわかる。あいつの身体に間接的ではあるが、最後に触れる。俺にそんな資格があるんだろうか。踏みにじられた桜の花びらが、また脳裏を過った。
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