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少艾と会話する夢では、不意に彼女の香を感じる時があった。夢だと頭の中では理解しているはずなのに一々無意味な想像に耽る。
此処に居る僕は何処の誰で、何故名前も知らない少女と廃寺の中庭に居るのか。
今度名前を訊いてみようと固く心に決めたはずなのにやっぱり幾度と無く失敗に終わる。何よりいつ終わるかが分からなかった。それに、そろそろ話すネタも底を着いてきていた。僕の方から話を降らないと彼女はどうやら話せないらしく、僕が話しかけると満面の笑みで対応してくれるので少し自信がつき、気持ちが良くなった。
「今日さ、学校でテストがあったんだけどさ、全然分からなかったんだ」
月に纏う薄い雲を眺めているのを確認しつつ、口を滑らせる。
「そーなんだ。私も受けてみたいな。テストとか」
「受けたことないの?」
「無い! よ」
終始句点が目立つ喋り方で、彼女は話す。でも気にはならなかった。
欠けた月を見上げて、何故こんなに綺麗に少女は鮮やかに笑えるのだろうか。
胸が苦しくなり、足の小指が微かに痙攣した。
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