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22 ※
「はっ・、はっ……」
まるで激しい運動をした犬のように浅い息を繰り返し、くたっとベッドに横たわる貧弱な体だ。
笑っただけなのにっ、体に力が入らない…
完全に撃沈している俺の様子を、ふっと笑う気配があった。
「すまない。楽しくて止まるのを忘れていた」
「っ…、!」
うまく言葉が出せない代わりに強い視線を向けてしまっても、それを逆効果だと真斗様は言う。
「っ、じ… 意地悪です…ッ」
のたうち回るように暴れたとき、奇跡的に一度真斗様の下からすり抜ける事が出来た。だけどそれは多分わざとだった。
逃げた俺はあっさり壁際に追い込まれ、"もう許してっ、許してください!!"と再びくすぐられないよう脇を守って抵抗した。なのに意地悪く真斗様は細く微笑むと、逃げた仕置きだと今度は何度も深い口付けで俺の呼吸を奪ってきたのだ…。
こっ、こんなの折檻でもなんでもない!
「ふん。これに懲りたなら二度と俺に仕置きだのと求めてくるな」
「‥‥!それと…っ、これとは、」
「雪路、まだ足りてないのか?ならば本格的に縛り上げて啼かせてやろうか?お前の苦しむ顔など微塵も見たくないが、今みたく真っ赤な顔で誘ってくれるなら喜んで応えてやるぞ?」
「――――っ!?」
それは嫌だと、想像しただけでビクッとしてしまったのだから立派な拷問ではあったのかもしれない。
だけど、こんな真っ赤な顔で、だらしなく口を開け涎を垂らしてる間抜け面がいいとは真斗様は少し変わっていませんか…?
「さぁて茶番は終わりだ。そろそろ、こっちに集中するとしようか」
「ひゃぁ!?」
ジタバタと暴れたせいですっかり裸てしまった浴衣はほぼ裸同然だ。俺のむき出しの太ももに真斗様の手が伸びて、少しだけ冷たい手に触れただけで過剰に反応してしまった。
「す、すみませんっ、ヘンな声を出してしまいました…」
「何故だ?可愛いじゃないか」
かわいい…?
期待してるみたいなふしだらな恰好と… 何度もキスをされたおかげで、俺の、まだ昂って萎えちゃいない男根に気付いてないわけでもないでしょうに…。
雰囲気を壊さない気遣いと思いたいのに、でも、嬉しくて胸が高鳴る。
「雪路。なにか俺に言うことはないか?」
「せっ…、精一杯努めますので、宜しくお願いします」
本来なら跪くのが作法なのに、まだちゃんと足に力が入らない。それでも前は挨拶すら出来なかったんだから随分マシな状況だ。(挨拶の中身は変えてしまったけど…)。
だけど真斗様が困った顔で「お前は…」と言うので俺は意味が分からず首を傾げてしまった。
* * *
「…ぁ、っ、…!」
感じてばっかじゃダメだと叱咤した。
自分などの為に貴重である潤滑油を使わせているのだから、せめて真斗がやりやすいよう大きく足を開き集中しなければ、と。
なのにその決心は無駄に消える。
「~~~~ぁ、んンッ」
尻穴の浅いところを指で擦られてしまうとダメなのだ。いくら後孔に力を入れないよう気をつけても、甘い痺れが走るとキュウッと真斗の指を締め付けてしまう。
(だめだっ、こんな…声ッ)
悲鳴にも似た高い声を上げてしまった瞬間、はしたないと咄嗟に自らの口を手で覆った雪路だったが、その行動を恥じらいや照れ隠しなどと思わない男がいた。
「雪路、手が邪魔だ。口を隠すな」
「っ、―――」
ぶんぶんと必死に首を振る。
俺の声は女性のように甘いものでも、鳥の囀りの如く綺麗なものじゃない。それくらい自分でもわかっていたし、男の嬌声なんて萎えるだけだと俺に房中術のことを教えてくれた兄様にも散々言われた事だった。
真斗様との情事があっさりと終わるなんて悲しい。
どうか、俺の声で萎えたりしないでほしい。
「チッ」
「やぁっ、だ、めです…声がでてっ、あっ――!」
しかし真斗が許さなかった。いくら雪路が風呂でのぼせたように赤くなった顔と涙目で訴えても、その細い手首を掴み上げ無理やり手を離させた。
「悪いが、今夜は余裕がなくてな?腕を縛られたくはないだろ?」
「~~まな、っ、・…」
「二度目だというのにまだ理解してないお前が悪い」
それは初めて見せた真斗の乱暴とも呼べる動作だったが、ギラギラする視線には"嫉妬"という感情が見え隠れしていた。
もう浅いところは良く解れたと、そのまま指を奥へ沈めると雪路の体がビクビクッと甘く痙攣した。
「ああっ、あ・、っ、ひあぁ」
「その声も体も、もう俺だけのものだろ?聞かせてくれ」
―――――― 真斗さま、の?
ようやく雪路の目の色が、しっかりと真斗を見た。
「げ、幻滅したりとか…」
「するものか、本当にお前は…。俺だけのためにあるなら、雪路が証明してくれ」
(あ、キス…、っ 嬉しい… )
くちゅ、くちゅ…と、一生懸命に舌を出して絡ませるだけだった行為を、卑猥だと感じたことなんて一度もない。
真斗様は以前「慣れている」と言ってくれたけど、こんな多幸感に包まれたこともない。
――――もっと知ってほしい
貴方だけだってことを
「ッひ、んっ~~~~、あ、あぁ゛っ―――!」
「あぁ、その調子だ」
体が、頭の中が、沸騰していた。
なのにもっと奥も触ってほしい。指だけじゃ触れない場所を、と貪欲に求めてしまう。そこがもっとイイってことを、とっくに体は覚えてしまっていた。
「あと少し、奥に挿れるぞ?」
「ひゃっ、ら、め!そこ、いまは、あぁっ…!、――――あぁあっ!?」
少しだけ強くコリッと、触れてほしかったトコを真斗の指が突いた瞬間、びくんっと大きく雪路の腰が浮いた。
「――――、うそ、…っ」
一瞬なにが起きたのか分からなかった。とろっと性器の先端からは白い液体がでているのにソコには触られていない、もちろん雪路自身も触っていなかった。
なのに、今さっき全身を走った快楽は、明確なまでに甘い余韻を残していた。
「~~~~~ッ、っ、だめ…っ、です。ま、なとさま…っ、み、ないで…っ」
こんな恥ずかしい俺を、どうかみないで…。
女のように中を擦られただけでイッたなど信じられるはずがない。既に消えかけていた矜持であっても、ヒビが入ったようにショックだった。
「だから隠すなと言っている。減るだろ?」
「でも…っ、こんなの、は‥…っ」
「別におかしくない。子宮持ちのココは柔らかく人より前立腺も発達している。子種を受け入れる場所が苦しくないように、ちゃんと出来ているだけだ」
「そんなこと俺は知ら、ひっ!?だめ、まだっ…っ、あっ、あ…」
イッたばかりの体だ。また内壁をグリグリ擦るように責められると堪らず声が溢れた。
ぐちゅ、くちゅと… はしたない液が自分の中からも溢れている気がする。
こんなの知らない、俺じゃない… !
「何度でもイっていい。俺がそうさせている姿を、もっと見せろ」
「あ、っあ、あぁん」
血が、体が、熱い。
もっと奥―――――、そこに欲しい、あなたが欲しい…
「ほし、い.、やだっ、一人だけで気持ちよくなるの、つらい…っ」
もういやだ、我慢できないんです…
それに尻の中だけじゃなく、ずっと広げてる足もガクガク震えてて怖い…
大きく手を広げて、早くきてほしいと強請った。
「……真斗さま」
「あぁ、わかった。俺も限界だ」
訴えれば真斗様はヨシヨシと頭を撫でてくれた。
ようやく俺の中から指が抜かれて、大きくて熱いものが完全に柔らかくなったソコに触れた
「んぐ、あ゛っ、ーーーあっ・ああ、ぁ…!」
突き刺さるように中に入ってくる熱の塊に 全身が震える
「っ、痛いか?」
「ひっ、は……っ、あ゛、あ…!!」
痛くない 痛くないです…!
何度も必死に首を振って、真斗様の背中に腕を回した。
(うれっ、しい…、また抱いてもらえた…)
「――――、ですっ…、」
「……そうか、なら毎晩するか?」
毎晩?
こうして貴方に触れられて求められて、……いいかもしれない。
それを想像したら、奥がぎゅっと締まった気がした。
「くっ、キツいな、お前の中は…」
「おれは、っ、溶けて、なくなりそうです、っ…」
「……それは困る。 お前が溶けきる前に動くとしようか」
「ひ、あ゛、あ…、あ…―――、ッッ!?」
ぐりぐりと奥に入っていくのに、甘く痺れるような痛みとチカチカと視界で弾ける快楽の火花。
こ、れ…、前より、… 深い… ?
「~~~~~ひあ、あ、っ、あぅ、う゛ぁ、!」
真斗様、の名前が呼べない
肌のあつさ、吐息、
一途に俺を見つめる瞳が ぜんぶ愛おしい……
「雪路、雪路っ」
「ん、ぁっ、ああっ、あっ、ーーーーー!」
きもちいい
すき、真斗さま、が…好きです
必死に爪を立てて、いま自分が何を口走っているのかも分かっていない
きもちよくて、訳がわからなくなりそうな快楽を全身で味わった気がする―――…
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