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日は完全に沈み、夜空に月が浮かび地を照らしていた。
朱禰は実業家殺人事件の現場――蒼川雅紘の自宅の一室にいた。
部屋の中は事件が起きた時と変わらずの状況で、”少女Ⅳ”も壁に掛かったままであった。
「さあて、”イヴ”!いるんなら出て来て頂戴。今ここであなたを暴き出してやる!」
朱禰は大声で叫んだ。
すると突然どことなく怪しげに風が吹き抜け、絵画の掛かった壁に集中した。そこにはイヴが余裕そうな素振りで立っていた。
「やっぱり現れたね、イヴ」
「呼ばれたので、無視するのは可哀そうかなって思っただけだよ」
イヴは如何にも小馬鹿にするような口調で言った。
「お気遣いありがとうございます」
朱禰も負けじと嫌味たらしく言った。
「早速だけど、あなたにいくつか質問したいけど……」
「言わなくても分かるよ。いくつかの答えは望んだ通りだと思うから」
心を読む能力でもあるのか、朱禰の質問内容を把握している口振りであった。
――絵がどうやって実体化したのか?仮説として、廻向市には月から人間が降り立った(以後月人)伝説がある。月人は不思議な能力を持っているとされる。月人の子孫が現代に存在しているかは定かではないが、可能性としては高いと考えられる。つまり、月人の血を引く何者かが絵からイヴを解放したのではないかと考察する。
肝心の月人の血を引く何者かの候補だが、蒼川雅紘の■が■イラ■家の血を……(何故かここは執拗に搔き消される。故意の可能性が非常に高い)
「肯定はしない。そして否定は絶対にしない。明言は極力避けたいからね。でも、これだけははっきりと言える。全ては3年前から始まった。そしてイヴの今があるにもその時から」
――イヴの目的は何か?各地で目撃された動物にツバサが生える怪奇現象はイヴによる仕業で、それはイヴの目指す最終目標の為の選別。つまり、イヴの創り出す世界に必要なものを見極め、相応しい存在にその刻印としてツバサを与えている。最近その目撃情報が無くなったのも、選別を終えたからに他ならない。そして、最後の仕上げとしてイヴの創造主、相良鳳乃華を取り込むことを目論んでいる。
「完璧です。それこそ、イヴの正義であり当然の権利。自由の為の尊い犠牲は仕方がないことです」
――イヴの創り出そうとしている世界はどんなものなのか?
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――「そんなに知りたいなら、授けましょう。ツバサを」
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