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「合格おめでとう」
玄関のドアを開けるとお父さんの大きな声に迎えられた。すぐには状況を呑み込めなかったが、気づくと僕はお父さんに抱きつき、泣き出しそうになっていた。
居間の炬燵に入り、母が淹れてくれたお茶をすすりながら、両親によって開封された通知書をぼうっと眺める。あらためて受かってよかったという気持ちを噛み締める。ハッとして居間を見回すと父が、
「志乃はまだ料理教室から帰ってないぞ」
と訊いてもいないのに教えてくれた。少し照れ臭くもあったが、はやる気持ちを抑えることができなかった。
夕食は寄せ鍋で横浜にいる次男の晃を除いた家族みんなが「受かってよかった」、「よく受かった」、と合格を祝ってくれた。僕自身、本当によく受かったものだと驚いていたし、支えてくれた家族に本当に感謝していた。そのことを真正面からみんなに伝えたところ、みんなは「それは自分が頑張ったから」と言いつつも、父がやや冗談めかして、
「まあ、学園長とは思いが通じてポロっとあんなことを言ってくれたからなあ」
と大きな声で調子よく言うと、志乃が
「この2ヶ月間、あたしが面倒見てやったんだからね!出世払いで面倒みてもらわなくちゃ!」
とこれまた調子よく混ぜ返す。
「これは一生言われるな」
と父が締めてみんなで笑いあった。
僕が食事を終えて食器を下げようと立ち上がった時に長男の和之がぼそっと
「そうか、受かったか」
とつぶやく声が聞こえた。
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