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結局、卒業までの4ヶ月間で親しかった友だちと昔のように遊ぶことはなかった。クラスメイトから尋ねられれば受かったと伝えていたからその機会はあったが、僕から遊びに誘う気持ちにはどうしてもなれなかった。
一方で、それまで話しかけられることもなかったようなクラスメイトから声をかけられるようになった。
「勉強できるようになったんだ。じゃあ、この漢字はわかる?」
訊いてきたのは親が薬剤師だったり、学校の先生だったり、勉強に熱心な女の子たち。好奇心旺盛で、それまでできなかった僕が受かったことで、ちょっかいを出されるようになった。
2ヶ月では変わらない、変わるのはこれから……のはずだ、と心の中で独り言ちた。それでもいままでとは違った目で見てもらえることは新鮮で、たとえそれが好奇のまなざしであっても嬉しかった。
この間、新生活に不安がなかったわけではない。
次男の晃から高校時代の寮生活が大変厳しいものだったと聞いていたため、ある程度の覚悟はしていた。
例えば、相部屋や寮生間の序列、不味い食堂の料理、朝から晩までバレーボールの練習に明け暮れ、疲れ切った身体に鞭打って夜中まで勉強する生活……僕はスポーツの特待生ではないから、練習に明け暮れることはないだろうが、勉強に明け暮れる日々にはなるのだろう。
そして異郷の仲間とはうまくやっていけるのだろうか、心配は尽きなかった。
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