田舎という監獄

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 次の誕生日に何を買ってもらうか、嫌がらせを受けている友達を避けてどうやって遊ぶか、そして目の前にあるやりきれない将来への不安をどうするか、いつも心の片隅に止めておく。  そうしておいて考えるとはなしに、登下校の途中や風呂に入っているとき、お使いに出た時など頭の中で転がすように思い返していると自分自身の気持ちが自然と煮詰まってくる。  不思議なもので転機とはそういうときにやってくるものだと、あとになって気づくのだ。  その週末は梅雨真っ只中、外に遊びに行けず、何となく夕方まで家でダラダラしていた。父は少し離れた大きな街で開催された慈善活動の会合から手土産片手に帰ってきて少しくたびれている様子だった。  母にお茶を用意させ、土産のお菓子を家族にふるまいつつ、会合での話をいつものようにしていた。  いつもと違ったのは、遠くから参加したメンバーの1人が語った、その人の息子の近況に差し掛かったときだ。その息子は既に大学を出て働きだしているようで、過ぎ去った子育ての苦労話を聞かされたというわけだ。 「最近は難関校でなくても中学校から全寮制で教育する学校が出てきていて時代が変わった」  と、父が漏らした。その言葉に心が引っ張られるようなざわつきを覚えた僕は気づくと父に 「その全寮制の中学校についてもっと教えてほしい」  と、ぼそっと頼んでいた。父は眠そうな顔で、やや不思議そうに 「わかった」  と生返事をしたきり、また会合の話を母に向かって続けた。
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