田舎という監獄

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 8月最後の日に痺れを切らした僕は父に 「あの寮がある学校の話はどうなったの?」  と詰め寄った。そこで父は 「おまえ、本当にあの学校に入りたいのか?」  と問い返してきた。父は僕が本気だとはこれっぽちも思っていなかったのだ。僕は、 「入りたいから探してほしい」  と切り出した。そこからは堰を切ったように後からあとから自身の思いとともにまとまらない言葉が出てきた。 「僕はなにか力をつけたいんだ。長男や長女、次男のような何か誇れる力を。僕にもできると証明したい。でもここにいてはそれはできないと思う。次男のように厳しい寮がある学校に入って頑張らなければなれないと思う、頑張れるかどうか不安はあるけれど。」  今度の父は素早かった。すぐにそのメンバーに学校の連絡先を教えてもらい、1週間後には学校案内が送られてきた。  その学校は東京から1時間ほど郊外に抜けた街にある中高一貫の私立校だった。全寮制で、入試難易度を大きく下げることによって募集学生の間口を広げ、全国から学生を集めていた。入学後は英国のエリート寄宿舎学校に習い、寮生活を通じて知力、技術、健やかな心を育み、入学時の偏差値からは考えられないような難関大学への合格実績を上げていた。  父はその後、東京で開催された学校の説明会に参加し、教育理念にも一定の理解を示しつつ、僕の受験を許してくれた。
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