田舎という監獄

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 それからの2ヶ月間は、勉強が面白いようにはかどり、気づけば解けない問題はなくなっていた……というのは物語の世界の話だ。  正直、できない問題を繰り返し解き直し、それでできるようになる漢字はまだよかったが、算数は地獄のようだった。理由は大きく2つあったと思う。  1つは抽象的なことを考えることになれていないこと。もともと子どもはこうした力が発達段階にあり、自分で図や表を書いて具体的な形にしてみてこうした力をつけていくようで、これができないとなかなか応用が利かない。  2つ目は圧倒的に実戦経験が不足していたこと。解き方や公式を覚えて、何度も使ってみて、どういうときに何を使うか体に染みつくくらい積み重ねていないと実際の問題を解くときに使うことができなかった。  たまに帰省した次男がみてくれることもあったが、中学校で習う方程式などを使って教えようとするため、余計に混乱してしまい、整数、小数、分数の四則演算を正確にできるようになるので手一杯だった。  夜の10時まで必死に勉強しても解けない問題は結局解けるようにならず、11月の終わり頃にはどうしたものかとやけっぱちになりかけていた。そんな僕を見かねた志乃はこれまでやってきた漢字や計算ノートを机に積み上げ、 「漢字や計算の問題はほとんど解けるようになった。この2ヶ月、人生で一番勉強しただろうし、やれるだけのことはやった。ここにその証拠がある。あとは全力を出すのみ。」  そういって僕を励ましてくれた。  12月6日(土)、試験日前日。おそらく両親の人生でも数えるほどしかなかったのではないかと思う。お店を従業員に任せ、中学校の近くの街まで電車で5時間。  僕は慣れない電車での移動だけで疲れてしまってホテルに着くとベッドに倒れこむように横になった。緊張していたが、明日のことなど考えられる余裕もなかった。
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