田舎という監獄

9/13
前へ
/14ページ
次へ
 学科試験は練習通りだった。漢字は解けた。文章も読めた。計算もできた。文章題はできなかった。 それから面接試験は親子別々だった。僕は偉いであろう先生の前に立ち、大きな声で名前を名乗って終わりだった。  午前中で試験は終わった。父はなぜか上機嫌で僕の好きなものを食べに行こうといってくれた。正直、試験結果が気になり、そんな気持ちにはとてもなれなかったが、あまりに父が勧めるのでラーメンが食べたいとお願いした。  都会のデパートにある中華料理屋に入る。僕が思っていたようなラーメン屋ではなく、出てきた海老五目ラーメンの味も期待外れだったが、暖かいスープがその時の僕にはありがたかった。食事をとりながら、試験結果についての不安をゆるゆると両親に話したところ、父はニコニコしながら、 「結果はまだわからないけれど、きっと悪いことにはならないから大丈夫だ。なってきたことを受け入れて、喜んでその時そのときを頑張ることが大切だから。それにいまから心配しても仕様がない。」  とあたり前の正論をいうのだった。 「それに、お父さんたちは学園創設者の園長と面談をしたけれど、ひとつ不思議なことがあった。ひとしきり教育のことなどについてお父さんが話したあとに、園長が「大切なお子さんをお預かりさせて頂きます」といっていたんだ。まだ学科試験も終わっていないのにおかしいなと思ったけれど果たしてあれはどういう意味だったのか。まあ、きっと大丈夫だ。」  励ましてくれる気持ちは嬉しかったし、子ども心に、半信半疑、寄りかかりたくなる気持ちが大きかったが、安心など到底できなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加