屍魔狩人の涙は涸れても

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 屍魔は話さない――だから、これはラドゥだ。  生前の人格と記憶を取り戻した兄だ。 「兄さん!」  ヴィアがおもわず伸ばした手の先で、人型だった炎が崩れ落ちた。 「兄さん――」  ヴィアはがくりと両膝をついた。  やがて東の空がうっすらと白みはじめ、わずかな暁光が焦げた草むらで何かに反射した。  ヴィアはのろのろと目を動かした。  そこには、燃え残った自分のブレスレットがあった。  ヴィアはブレスレットをつかみとり、地に突っ伏した。  涙はなくても、それは間違いなく死者を想う慟哭だった。 《了》
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