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翌日も、相変わらず手ぶらのまま遊びに来る子ばかりだった。
再びカチン、とスイッチが入る。
私は「ごめんね、今日はお菓子を用意してないんだ」と嘘をついた。
リビングにいれば騒ぎ声が耳障りだからと、二階で洗濯物を畳むことにした。
包丁や割れ物がたくさんあって危ないので、キッチンに立ち入らないよう、先生のように視線を集め、皆に向けて穏やかに伝えてから階段を上がる。
すぐさま、大人が居ないからとタガが外れたらしい騒音が、階下から駆け上がってきた。
その声が、頭に響いて腸が煮えた。
畳み終えて一階へ降りると、騒ぎすぎて私の足音に気づかなかったのだろう子どもたちの視線が、私にひとつ、またひとつと向けられた。
手元には、お菓子とジュース。
キッチンに立ち入り、冷蔵庫や食品庫を開けたことは明白。
大人げない、といえば、そうなのかもしれない。けれど、我慢ならなかった。堪忍袋の緒が切れた。
「お、おじゃましましたぁ……」
ひとり、逃げた。
「わ、わたしも」
「ぼくも」
ひとり、またひとり逃げた。
コウタとふたりだけになったリビングは、先ほどまでのどんちゃん騒ぎが嘘のように静まり返っていた。
「お、お母さんの嘘つき」
「……はい?」
「お、お菓子もジュースも、あるじゃないか」
友だちを呼ぶのなら、お菓子やジュースなどを持ってくること。
危険なものがあるから、キッチンには立ち入らない。
ふたつのお願いを破り捨てたくせに、人の嘘には文句を言うのか。
だいたい、そのお菓子もジュースも、コウタのために買っているのであって、よその子どものために買っているわけではないのだ。
そうだ。
私は給餌したくて買っているのではない。コウタのために買っているのに!
そうよ。
コウタがたらふく頬張っているならまだしも、いつもよその子ばかりが貪り食っている姿を見ているから、余計に腹が立つのよ!
一度噴火した思考は、とめどなくマグマを吐き出した。眼前のコウタがギリギリと奥歯を噛み締めていることも、今にもこぼれ落ちそうなほどに涙を溜めていることも分かっていた。
それでも、私は――吐き続けた。
無言の夕飯。私は食前食後の挨拶言葉を囁いたけれど、コウタは言わなかった。いつもならば叱りつけるところだが、そんな気力は残っていなかった。
お父さん、帰ってくるの遅いのよ。安月給のくせに。こんな日くらい、早く帰ってきなさいよ。
そして、私の背についてよ。
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