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5
ひとりの時間がやってきた。
ああ、そうだ。
噴火し、マグマがとめどなく流れていた時には、この瞬間のことを忘れていた。
私にはいつも、ひとりの時間があったじゃないか。
いいや、違う。
これはひとりの時間じゃない。ただ、ひとりでいる時間だ。
自分のための時間じゃない。自分のためのひとりじゃない。家族のために、城を守るという任務の途中でしかない。
今、こうしてぼーっとしてしまっているのは、昨日頭を使いすぎたせいだ。
いつもならば、背中が見えなくなるまで見送り、食器を洗い、掃除をし、一息ついて、お昼ご飯を食べたら買い物に行く。食材やお菓子を買って帰って、そして――。
そう、こんなにぼーっとすることはない。喉が渇いたからと飲み物をいれてほっとすることはあるし、ちょっと休憩、とテレビを見ることもある。
けれど、こんなにぼーっとすることはない。
どうしてしまったのだろう。
寝不足、だからだろうか。
どうせ、今朝は炊飯器を使っていないのだし、洗い物などたいしたことなかった。掃除は、手抜きでいいか。
そういえば、お父さんは仕事に間に合ったのだろうか。
朝ごはん、どこかで買って食べたのだろうか。
どうして起こしてくれなかったのだろう。
私が彼より後に起きることなどない。今日は少しゆっくりしているだけ、放っておいてもちゃんと間に合うように起きる、とでも思われただろうか。
いいや、違う。事実、間に合わないことが確実の時間まで私は放置されていたのだから。
ぐるぐると、考え事をしていた。
ずっと、ゴールのない考え事を。
ハッとした時にはもう昼だった。
いけない、掃除をしなくちゃ。
みんなが来た時に、汚い家だなんて思われたくない。だから掃除をして、それで、そう。晩御飯の食材とお菓子……いや、お菓子は買わないことにしたんだったっけ?
掃除機をざっとかけ、家を出た。
朝からご飯をろくに食べていなかったからだろう、スーパーに着くなり目移りが酷かった。
買い物には、腹を空かせて行くべからず。
節約の基本中の基本じゃないか。
しかし、空腹は私のことなど考えてはくれなかった。あれが食べたい、これがいい、あれを買おうと胃がうるさい。
たまの贅沢くらい、いいだろうか、と、サンドイッチを買った。唐揚げも買った。プリンも買った。いつもであれば、こんな金額を払うならお菓子を買うためにこのお金を使おうと我慢する、期間限定フレーバーのコーヒーも買った。
散財し集めたそれらを、帰るなり口に放り込んでいった。
おいしい気がした。
おいしい気はしたが、おいしいと心弾ませることはなかった。
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