タイムマシン

2/7
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 「潮雄、お父さんから話があるから」  母の名は慶子。旧姓は麻生。  40歳を越えたとはとても思えない美女だ。それもSSランク。この人はいくつになったらオバサンになるのだろう。いや、きっとならない。  電車で通学していた高校時代、母は「埼京線最強の慶子」と呼ばれるプレミアキャラで、同年代で知らない者はいない程の美少女だったのだ。  何社もの大手芸能事務所による争奪戦が繰り広げられ、鳴り物入りでアイドルデビューする予定だった。  事情があってなかったことになったが、本当なら今頃はディナーショーでも開いていたかもしれない。    美貌で芸能人の座をゲットする様な本当の美人は、何も特別な事をしなくても普段から美人である。  潮雄の母さんってすげえ綺麗だよな!等というクラスメイトの声はとっくに聞き飽きている。  そんな母に育てられた潮雄は、幸か不幸か未だにどんな女優やアイドルも美人だと思った事が無い。  小さい頃は、母親は特別な存在だからみんなそうなのだろうと思っていた時期もあったが、そんな誤解はすぐに解けて、別の疑問が潮雄を襲う事になる。  格別に美形な母の顔は人形かアニメキャラの様に小さく、そして手脚もすらりと長い八頭身。  自転車通学のためのヘルメットは特大サイズで、制服のズボンはクラスの誰よりも裾上げしてもらう潮雄とは大違いだ。  とても親子とは思えないくらいに。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!