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「潮雄、ちょっといい?」
ちょうど動画サイトを眺めるのに飽きて、スマホを放り出してベッドに転がった時だった。
部屋のドアを叩き、秋葉潮雄のまぶたを弾いたのは、いつもとはどこか雰囲気が違う母の声。
……来たか……!
きっと今夜だろう。そんな予感が当たってしまった。
いや、本当は幼い頃から。
誕生日の夜や女の子に振られた日、テストの後などなど、事ある毎に同じ予感がしていた。高校生になってからは毎日だったかもしれない。
明日から潮雄は二年生。就職や進学がリアルに迫って来るこのタイミングでついに来た、来てしまったのだ。
下手な予感も数打ちゃ当たる。
当たらなくて良かったのに。
いや、日常的に感じていたそれは最早、予感とは違うものかもしれないが。
ついに予感は実感へと変わるのだ。
ドアを開けると、ほらやっぱり。
母の表情が、纏う空気が告げている。
ちょっと深刻な話をするわよ、と。
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