タイムマシン

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 『……天才少年、秋葉潮雄君を中心としたプロジェクトチーム。  彼等は遂にタイムマシン!タイムマシンを完成させたのです!  夢の発明、という言葉がこれ程似合うものが他に存在するでしょうか!?』  テレビの声に、やめてくれよと潮雄は頭を掻いた。  「父さん。悪いけど実は俺、あのタイムマシンで二人の若い頃を調べて来たんだ。  だから知ってる。間違いなく俺は父さんと母さんの子供だってね」  父も母も、一世を風靡するアイドルや大物俳優になれた可能性があった。  だが、抜群の容姿に恵まれたと言うのに台本や歌詞をまったく覚えられなかった。  更に極度のあがり症で、人前で演技や歌を披露するなどとんでもない事だったのだ。  そんな二人から潮雄の様な天才児が生まれたなど、親戚も友人達も誰も信じられなかった。  親子で似ていない事はまれにあるし、血液型やDNAによる鑑定でも親子であると証明されているのだが、それでも誰よりも信じられなかったのは父と母である。  初めは賢い子だと手放しで喜んでいたが、やがてこの子は俺達の子供じゃないのかも、という疑問が産まれ、今ではいつかこの子に見捨てられるんじゃないか?という疑惑に育っていた。  他のどんな天才児と比べても、潮雄は異次元の存在だった。  潮雄と共に両親の中の不安も成長して行ったのだ。  だから潮雄は予感していた。  そのうち二人は息子である自分に、お前は本当に自分達の子供なのかと尋ねて来るだろうと。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加