この人生は無題でいい

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 部活が終わり、後片付けを一年生に任せる。他の部員はすぐに帰るが、部長である僕は体育館の鍵を返却する役目がある。今年の一年生はやる気のある人たちばかりで、誰もだらける者はいなかった。きつい練習メニューだって文句言わずに、ついてきていた。これなら安心できると考えていると一年生たちが目の前に集合した。片付けが終わった報告をしに来たようだ。帰っていいと許可を出すと、大きな声でありがとうございましたと言ってすぐに帰っていった。だが、一人だけその場に残った。 「……朝のことなら謝らないからな」 「部長、猫被ってんすか」 「関係ないだろ」  人がいなくなった体育館に声が反響する。東条の言いたいことがわからなくて強がる。 「俺、一人で残って練習したいんすけどダメっすか。鍵も俺が返しとくんで」 「ダメだ。門が閉まる時間がある。これを守れなかった部活はしばらく活動禁止になるから」  すると、東条は納得したのか小さく、そうっすかとだけ言って帰っていった。唯一の問題児はあいつだ。どうやってまともな敬語を叩き込んでやろうか。いつまでもあんな話し方されていたら気分が悪い。朝からむしゃくしゃする気持ちを、壁を蹴ることで発散しようとした。すっきりしない。明日もあいつと顔を合わせて練習しなければならないのが、憂鬱だ。
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