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オトゥがドレスの裾を持ち上げながら、しずしずと司令官席の前へ進み出る。
「ねえ、パパ? お願いがあるの」
オトゥが急に、か細く甘えた声を出した。ヴォルフは、危うくズッコケそうになったが、そばの椅子につかまって辛うじて身体を支えた。
器用に声音を変えて、物事を自分の思い通りに進めようとする彼女のやり方に、彼はとにかく馴染めなかった。
ドードは、眉間のしわをほどき言った。
「よろしい。言ってみなさい」
二人のやり取りの間はいつも、その場にいるヴォルフ他、ダイソンを始めとするオペレーター、スタッフは言葉を交わすのを控えた。
静けさの中、周辺の機器から電子音が漏れているだけだった。
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