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『厳密に言えば、このスマホは元々あなたのではないわ』
「なに?」
彼は言葉に窮した。
ミュウは記憶をなくした者には謎かけをしても仕方がないと思ったのだろう。
さらりと言った。
『プリンセス・オトゥからの贈り物よ』
やはりヤマトの記憶にない人物であった。
プリンセスを名乗る、いかにも怪しげな人物について訊くとミュウは事もなげにいった。
『我らが王女。リントヴルム王国の次期国王よ』
このスマホはそもそも自分の愛用していたものでなかったのなら、大した情報は登録されてはいないだろう。
自分の意思で機種変更したのではないなら、いや、それ以前に日本の電話会社ではない時点で、ご丁寧にデータ移し替えができているとは思えない。
そう思い当たると、ヤマトは急に気が遠のいた。
その時、潮風が吹きすさぶ中、緊急車両のサイレンが聞こえた。
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