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ヴォルフは、潜水艇に乗り込むなりキャプテンシートに、どっかりと身を預けた。どうにも気分が乗らない。
思わずため息が出る。
操縦士の男が発進に伴い、シートベルトの着用を促した。
「はいはい」
両足をだらりと前に投げ出していたヴォルフは、緩慢な動きでベルトを引っ張り出す。
三人の部下はそれを表情もなく黙って見ていたが、彼がベルトをつなげたのを確かめると一同は正面を向いた。
「ロック解除」
その声が聞こえてまもなく、船体がわずかに浮揚するのを感じる。
操縦士がフロントガラス上部のパネルのスイッチ類を順番に弾くと、ゆっくりとレバーを手前に倒した。
「カメサン、発進!」
ヴォルフがすぐさま反応した。
「ちょっと待ってくれ」
操縦士がレバーを戻す。
それに伴い、上昇していたエンジンの回転数がダウンしていく。
やがて操縦士が振り返った。
「隊長、どうされました?」
「どうしたも、こうしたもないだろ。それがこの艇の名称か?」
「はい」
「まさか『亀さん』そのまんま?」
「はい」
ヴォルフは思わず唸り、それから長く息をついた。
「おい、全く勘弁してくれよー。なんだ、それ? だるっ」
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