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「何か言ったか?」
女性の低くも艶やかな声がした。それと同時に、前部のモニタ画面がオトゥの顔を大きく映し出す。
(ぅげっ!)
反射的にヴォルフの背筋がビクッと伸びて、後ろへひっくり返りそうになる。
「あ、いや、その、なんだ……カメサンの乗り心地抜群だなあ、って皆と話していたところで。なあ、お前ら?」
隊員一同、一瞬顔を見合わせてから、しきりに頷き合う。
「なら、良かった。ナチスひいては第三帝国の高度な軍事技術精神が、我が国の軍需産業に今なお息づいているからな。カメサンは、いわばUボートの系譜を引く最新鋭の作戦潜水艇だ。人類史上の最高傑作と言わねばなるまい。同時に開発している陸上二足歩行兵器クマサンは、戦火にまみれた欧州大陸を席巻した6号Ⅱ型、通称キングタイガー戦車に近代的なアプローチをした試作を重ねている。また貴様に試してもらうつもりだ」
それを聞いたヴォルフは、次なる「熊さん」に内心脱力しながらも、ほっと胸をなでおろした。
が、オトゥは続けて言った。「では、いったい何がだるいのだ?」
(え?)
艇内が静まり返る。
水を切る、くぐもった音だけがしている。
すると脇の席にいる部下のルイーズが口を挟む。
「僭越ながら申し上げます! そう言ったのは自分であります!」
(は?)
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