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市民病院に運ばれたヤマトは、脚にできた傷口の応急処置を受け、レントゲン検査で骨折の有無を調べられた。
自分の氏名や住所を問われた際、記憶喪失を訴えたために脳の損傷を調べる検査や、運動機能の測定も盛り込まれた。
その検査室の前のベンチで順番待ちをしていると、看護師に付き添われた3人の家族連れが現れた。
「ほら、やっぱり、やっくんだ」
少し歳のいった女性が、軽くパーマをあてた頭をあとの二人のいる左右に振りながら、ヤマトを指さした。
が、ヤマトは、親しげな名で呼ぶ彼女が自分にとって誰にあたる人間なのか、正直なところ、まるで分からない。
おそらく母親なのだろうが、そうすれば彼女の脇にいる年輩の男性は父親だろうか。
そして、若い方の女性は妹なのかもしれない。
ヤマトは、その3人を遠巻きに観察こそすれ、自分から声を掛けることまではできなかった。
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