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数年の時が流れ、私は大学生になった。
高校卒業後には幼少期からお世話になった祖母の家を離れ、私はバレリーナが暮らすマンションの部屋に一緒に住むことになった。
「緊張する」
「渚なら大丈夫よ、どんなお洋服でも似合うもの」
弱音を吐く私に、バレリーナはそう言いながら満面の笑みを向けてくる。
面接に受かり、来週からアパレル店員のバイトをすることになったのだ。
人生初のアルバイトに私は、とても緊張していた。
「あら、やだ。私ったら、お味噌汁作ったのすっかり忘れてたわ」
バレリーナはすくっと立ち上がり、口元に手をあてながら言う。
ピンと無駄に綺麗に伸びた指先が、やはりこの人は根っからのバレリーナなんだなと思わせる。
「なんで食べ終わった後に思い出すのよ……もうお腹いっぱいだよ」
パタパタと小走りに台所へ向かう彼女を視線で追うと、不意にテレビから流れる音声が耳に響いた。
『次は視聴者からの特ダネ投稿コーナーです』
テレビがある方へ顔を向けると、そこには見覚えのある女の人が水色のチュチュを着て映っていた。
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