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すると、どこからともなく聴き覚えのある懐かしい曲が流れてきた。
紛れもない、あのオルゴールの曲だ。
私はコートを目の前に広げたまま、呆然としていた。
なんだなんだと通行人が集まり始めると、彼女はようやく回転を止めた。
チュチュの両端を指先でちょこんと摘み、優雅な動きで深々とお辞儀をする。
私達の周囲を取り囲むように集まった通行人達は、歓声をあげながら拍手をした。
私は慌ててコートごと彼女の細い身体を抱きしめると、縺れるような格好で歩き出す。
「なんでもいいから、とにかく上着ちゃんと着て!」
「そうね、どうもありがとう」
こぼれるような笑顔を向けて、バレリーナは歩く足は止めずに私の手から受け取ったトレンチコートの袖に手を通した。
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