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私はカップに添えられたティースプーンを摘むと、底に残った砂糖の欠片をかき混ぜる。
最後にコーヒーミルクの蓋を開けて、小さな黒い水面に白い線を描くと、カップをバレリーナの方へと差し出した。
「神様がなんとかオルゴールを直そうとしたんだけど、完璧には直せなかったの」
「……たしかに、完璧とは言い難いね……」
私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「私は出来損ないよ」
バレリーナはそう言うと、白魚のような手をカップにそっと添えた。
「でも渚と会って、初めて自分の存在に意味を見出せた気がするの」
彼女は空いている右手で、テーブルの上で握り締めたままの私の手を包み込んだ。
「ありがとう」
そう告げる彼女の瞳は、ガラス玉のように煌めいていた。
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