その引き金を引く時。

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午前6時。 目覚ましの1コール目で目覚めた俺はベッドから起き上がり、妻を起こさないようにそっとシャワールームへ向かった。 軍服に着替え、勝手口のゴミ袋を道路わきのダストボックスに放り込んだら車に乗り込んで出勤する。 夏の朝は気持ちが良い風が吹いていた。 途中、寄り道してドーナツ屋でクリスピーとホットコーヒーを買う。 早出の日はちょっと憂鬱だが、揚げたてのコイツを食えるならそう悪くない。 基地に着くと早速ブリーフィングがはじまる。 今日の内容を再度確認し、事務所で本日2杯目のホットコーヒーを啜りながら同僚と小話をしたら作戦室に向かう。 俺は本日の仕事場である無人航空機の遠隔操縦席に座りスティックを握った。 現在、俺の目となっているUCAVは地球の反対側、中東の高度4000mを飛行している。 現地時刻は午前3時。 人々が寝静まった静寂の月下。 高性能赤外線カメラにより、暗闇の中でも建物の細部から歩くヒトの顔まで鮮明に確認することができた。 目下には閑静な工業エリアが広がり、そのうちの一棟が今回のターゲットだった。 今回のターゲットは中東に潜むテロリスト集団”middle east Liberation Army”、通称「MELA」の武器貯蔵施設だ。 MELAは中東で独立国家建国を目指す過激派集団であり、現在は周辺地域への武力的統治と各国への独立へ向けた一方的な支援を要求している。 中東の情勢悪化は国内外問わず大きな損害を生みだしている。 周辺国へなだれ込む難民もそうだが、世界的な燃料の高騰が先進国にとっては大きな問題となっていた。 そこでMELAのリーダーである”アサラド”の拘束および殺害を視野に入れた作戦が実行された。 調査開始から1年。 そのアサラドの所在は今だ掴めずにいたが、その過程でMELAの武装、物資の多くがとある民間配送業者の倉庫を経由していることが判明した。 彼らは民間配送業者を隠れ蓑に各地の”同士”のもとに物資を供給していたのだ。 また、この民間配送業者の社長は別の人道支援団体のリーダーを務めていたのだが、これがまた怪しい組織であった。 その団体は各国から送られてくる難民への支援物資に関する一部地域への配給を手がけているのだが、現地調査の結果、割り当てられた物資量に対して現地での供給量が著しく少ないことが判明した。 これは、なんらかの過程で物資が不正に中抜きされていることを示し、人道支援のための物資が実はMELAのテロリスト活動に使われている可能性が高い。 アサラドの行方が分からない現在、部隊はテロリストの活動を抑制するためにこの倉庫の爆撃を決定した。 「目的座標に到着。ターゲットAを確認。」 「ヘルブラスト発射準備。」 グラ―ニン少佐の指示で俺はターゲットAである倉庫にミサイルの照準を合わせると安全装置を解除した。 「ヘルブラスト発射準備。ターゲットロックしました。」 「…発射。」 スティックについた発射ボタンを押すと中東の空を舞うUCAVからミサイルが発射された。 ミサイルは指定されたターゲットを目掛けて加速を続ける。 「着弾まで5、4、3、2、1…着弾。」 着弾による爆発で赤外線カメラの映像は真っ白になった。 燃え上がる炎は赤外線カメラに映り白い揺らめきとして観測できた。 「作戦終了。UCAVを帰投させろ。」 「了解。」 UCAVをオートモードに切り替え、基地への帰投プログラムを実行する。 あとは機械が自動で飛行、着陸まで行ってくれる。 俺がすることはそう多くない。 UCAVはパイロットの安全性、訓練の容易さ、コスト面から注目を浴び、現在では有人機よりも多くの無人機が作戦に参加し、俺のような無人航空機専門のパイロットも増えてきた。 さらに、ここ数年でUCAVの高性能化に伴い操作感もかなり簡易化され、子どものころ遊んでいたエースコンバットとそう変わらなくなった。 いつの日かプロゲーマーから軍に転身してくる人材も出てくるのかもしれない。 ボタンひとつで画面の向こうの誰かが死ぬ。 戦争という”ゲーム”が本当の”ゲーム”になってしまう。 俺はすでにその”プレイヤー”なのだろう。 仕事を終えて自宅に帰ると妻のアマンダがキッチンで夕食の準備をしていた。 「ただいま。」 「おかえりなさい。もうすぐ食べれるから先にジェシ―をお風呂に入れてもらえる?」 「イイよ。ジェシ―は?」 「二階よ。」 「ジェシ―!パパと一緒にお風呂に入ろう。」 俺が二階に向けて声を掛けると「はーい!」という元気な声が帰ってきた。 二階からドタドタと足音が聞こえ、階段を駆け下りてきたジェシーは俺の胸に飛び込んできた。 俺はジェシ―を受け止めると頬にキスした。 「お帰りなさい!」 「ああ、ただいまジェシ―。さあ、お風呂に行こう~」 俺はジェシ―を抱きかかえたまま連れてバスルームに向かった。 日課のジェシ―とのシャワーを浴びたあとは3人で夕食を囲んで今日一日あったことを話し合った。 食事が済むと俺は食器を片づけていつものように洗い物をはじめ、妻にはその間にシャワーに行ってもらった。 そのあとは決まって俺はジェシーと一緒にリビングでテレビを見る。 コメディー番組のあとニュースで中東のアサラドに関するニュースが流れた。 内容は中東の内政状況と各国首相の声明に関するものだった。 「パパはあの人たちと戦ってるの?」 ジェシーがこちらを向いて問いかけてきた。 家族には自分の所属や仕事内容については教えているが、どの作戦に携わっているかなどは守秘義務として話していない。 「そうだよ。パパはこの国のみんなを守るために軍で働いてるんだよ。」 「じゃあ、パパはあの人たちを殺すの?」 直球な質問にドキッとした。 これは答えるのが難しい質問だ。 「ジェシー、どうしてそう思うんだい?」 「学校の男の子がテロリストはみんな殺されちゃうって言ってたの。ニュースでも。パパがヒトを殺しなんてヤダよ。」 ジェシーは優しい子だ。 だからこそこの質問に答えるのはまだ早い。 核心は伝えられないが本当の気持ちを話そう。 「ジェシー。パパはジェシーとママのことが大好きだ。どんなときでも2人の味方だし。もし悪い奴が現れたらパパのゲンコツでやっつけてやる。」 「ホントに?」 「ホントさ。見てみなこの筋肉、大きいだろ?」 俺は腕を曲げて力こぶをつくってみせる。 「だからジェシーは何も心配しなくて良いんだ。」 俺が笑ってみせると、ジェシ―の曇った顔にも安堵の気持ちが見えた。 「そうだ!週末はパパとデートに行かないかい?モールに買い物に行こう。」 「ホント?やったー!わたし雑貨屋さんに行きたい!」 「いいぞぉ!じゃあ、約束だ。」 俺は小指を立ててジェシ―と指切りをした。 ふぅ…。 なんとか話題を反らすことができた。 俺は任務となればアサラドを殺すだろう。 それは国を守るためであり、ジェシ―と妻を守るためだ。 その気持ちだけは本当だ。 中東の夏の平均気温は48度以上ともいわれる。 日中のうだるような暑さは全身から汗を吹き上がらせ、強い日差しがその水分をまたたくまに奪い肌を焦がす。 道行く人は皆トーブを羽織り、その日差しを避けるように歩いている。 しかし、地球の裏側にいる俺には中東の乾いた風も、舞い上がる砂埃の匂いも知ることはできない。 気温も風速も何もかもがUCAVが送信してくるパラメーターのひとつでしかない。 ここ作戦室は完璧な空調システムで年間を通して21度に保たれており、ときには長袖を羽織らないと寒いくらいだ。 先日の武器貯蔵施設の爆撃以降、MELAに動きがあった。 不足した物資を集めるために活動がさらに過激化したのだが、行動にボロが出た。 その結果、テロリストの動向からアサラドが隠れ家としている拠点の候補地がいくつか浮き彫りになってきた。 今回はその候補地のひとつを偵察するためにUCAVが派遣された。 その施設には平均して一日5人の人間が出入りしていた。 その中にはテロリストだけではなく民間人らしき人物も確認された。 そこで数週間、この施設を監視しているが未だアサラドらしき人物は確認されていない。 この施設が何らかの形でテロリストと繋がっていることは明白だが、その決定打も掴めずにいた。 ホットコーヒーをすすりながらUCAVから送られてくる映像をボヤっと眺めていると施設に一台のバンが横づけされた。 中からはテロリストらしき人物が4名に加え民族衣装姿の小柄な人物が現れた。 あれは…子どもだ。 「少佐。出入りしている人間の中に少女が1名居ます。」 少佐は椅子から腰を起こしモニターを凝視した。 「アサラドには2人の息子と1人の娘がいるとのことだ。彼女がその娘なのかも知れない。」 そのときモニターの中の少女が不意に空を仰いだ。 高性能カメラはその瞬間を見逃さず、彼女の顔を鮮明に映し出した。 それは比較的色の白い肌に子どもらしいクリッとした丸い瞳をした丸顔の少女だった。 「顔を確認しました。」 画像処理スタッフが画像をピックアップし、主モニターに映し出した。 「この画像を現地調査員に転送しろ。どこの誰だか突き止めるんだ。」 週末のショッピングモールは子連れの親子やティーンエイジャーで賑わっていた。 ジェシーはあれが見たいこれが見たいと俺をリードして人混みの中をルンルンと歩いていく。 はじめは足並みを揃えて店をまわっていたが、次第に手を引かれるようになり、最後には背中を追いかけるようになった。 普段から訓練は欠かしていないが子どもの元気というのは恐ろしいなと思う。 最終的にはジェシ―嬢の後ろを歩く荷物持ちの使用人のような気分だったが不思議とこの仕事には喜びを感じた。 昼食はジェシ―の希望でピッツァにした。 料理が届くのを待つ間、ジェシ―は雑貨屋で買ったシールのドレスをお気に入りのシール手帳に貼り付けはじめた。 そこで俺はジェシーと一緒に手帳上で繰り広げられるおままごとで遊んだ。 ジェシ―いわく、オリビア(ジェシ―が名前を付けたシールのキャラクター名)のパーティードレスが足りないためバートン(これもキャラクターの名前)の服屋で買い物をしたいのだが、あいにく在庫が切れていていたため今日はその仕入れ作業をしている。らしく、バートンのページに買いたてのシールをペタペタと貼り付けた。 そのうえ、オリビアは金欠でドレスを買うのにはアルバイトをしなければいけないという。 なんとも生々しい世界観だ…。 美味いマルゲリータを食った帰りにモール1階にある花屋に妻へのプレゼントを買いに行った。 「このお花カワイイ。」 そういってジェシ―が選んだのは真っ白なデイジーだった。 「綺麗なお花だ。ママも喜んでくれかな?」 「うん!」 「ならこれにしよう。」 店員に頼んで小さなデイジーの花束を作ってもらう。 ジェシ―がラッピングに選んだピンクのリボンがアクセントになって可愛らしかった。 ジェシ―は花束を大事そうに片手で抱え、もう片方の手は俺と手を握り街路を歩いた。 そういえばこうやってジェシーとふたりきりでゆっくりする時間はあまりなかった。 今日一日一緒にいただけでジェシ―の成長と変化をダイレクトに感じる事が出来た。 特にあんなジェシ―があんなリアリティのあるおままごとをしているなんて。 一緒に見ているワイドショーの影響だろうか? 後ろから車のタイヤが擦れる音がした。 振り返ると黒塗りのバンから銃を持った覆面の男たちが4人出てきた。 脳が理解するよりも早く訓練された体はジェシーを引き寄せてすぐそばにあった車の裏に隠れた。 ドドドドドォッ!!! 乾いた、それでいて重い炸裂音がした。 女の悲鳴とガラスが砕ける音がした。 男たちは宝石店に押し入るのが見え、見張り役らしき男がひとりが街路に残ってキョロキョロとせわしなくあたりを見渡していた。 近くにいた若い警官が慌てて銃を抜く。 警官は気が動転していたのかその場で警告もなしに男に向かって発砲した。 銃弾は男の横をかすめ、それに興奮した男が奇妙な雄叫びとともにアサルトライフルを警官に向かって乱射した。 警官は身を隠そうと車に走り寄るが胸元に銃弾を受けてその手前で倒れた。 「パパ!」 「大丈夫だ、静かに。」 大声をあげるジェシ―をなだめ、車越しから様子を伺う。 警官の足が動いた、まだ生きている。 「ジェシ―。パパが良いっていうまでここに隠れていなさい。」 「パパは…?」 「パパはあの警官を助けてくる。」 俺はジェシーに言い聞かせると男の死角にあたる車の裏を通って警官のもとに近づいた。 俺は警官の腕を引き車の裏まで引きずり込む。 男が俺の行動に気づいたのかこちらを撃ってきた。 ボォンッ!というアルミ材が曲がる音とともにハザードが砕けた。 「大丈夫か?!!」 警官は左肩を撃ち抜かれていた。 俺は警官の右手から拳銃を取り上げ、左肩に添え直させてから上から押し付ける。 「ウ”ッ!」 男はうめき声をあげる。 俺は車の裏から男を覗き込むと男は銃を撃ち返してきた。 男は確実に近づいてきていた。 おそらく興奮していて本来の目的を忘れている。 撃たないと殺される…。 鼓動は高まり、アドレナリンを感じた。 震えている…。 しかし、訓練された体は迷うよりも行動に移した。 俺はボンネット側に回り込み上から顔を覗かせ狙いを定める。 はやる気持ちとは裏腹に、時間はどこまでも長く感じた。 男は驚き、照準をこちらに向けようとしている。 俺は男に向かって引き金を引いた。 はじめの1発は男の首に当たった。 2発目は胸。 3発目は空を切った。 首から肉片と鮮血をバラまいた男は腰が抜けるように崩れ、仰向けに地面に倒れ込む。 ちょうどその時、仲間の強盗たちが店から出てきた。 仲間のひとりが男を一瞥したが、そのままバンに乗り込み走り去ってしまった。 一瞬の静けさのあと、俺は銃を構えたまま男に近づいた。 男は右手で首筋を抑え必死に止血を図ろうとしていた。 男は息をしようと大きく胸を上下させるが喉に空いた穴から逆流した血が肺に流れ込み、むせ返ることを繰り返しながらゴボゴボと下水口に似た音をたてるばかりだった。 彼を…殺してやるべきだ。 どのみち助からない…。 拳銃を構え、男の頭を狙う。 男が覆面に空いた穴から俺を見ていた。 見下げているのは俺なのに見下されているような目だった。 殺してくれという懇願の目だった。 殺してやるという憎悪の目だった。 これは現実なのか?それとも夢なのか? 早く終わらせよう…。 しかし、いくら脳が指令を出しても引き金が引けなかった。 頭で分かっていても体が動かない。 指が震える。 現実ではない。 現実感がない。 いや、現実を直視できない。 脳内に溢れ出す麻薬が俺を現実から乖離させる。 俺と男の関係を曖昧にさせている。 …やがて男は音を立てなくなった。 俺は銃を降ろした。 男の目だけはずっと何かを訴えかけていた。 相談室に案内されてしばらくするとノックの音がした。 ドアが開くとカウンセラーのワトソン先生が入ってきた。 「こんにちは、クラークさん。旅行はいかがでしたか?」 ワトソン先生は向かいのソファに座ると丸眼鏡を指で直し、にこやかに話しかけてきた。 あの事件以降、俺は3週間の休職を言い渡された。 自分でも少し心の整理をする時間が欲しかったし、なによりジェシーのことも心配だったため、家族と一緒に過ごせることは嬉しかった。 幸い、ジェシ―は精神的にも安定していて、俺も定期的にカウンセリングを受けながら心の整理をすることができた。 そこで経過も良好ということもあり、ワトソン先生に許可をもらい思い切って家族で旅行をすることにした。 「とても楽しかったです。旅行なんて久しぶりでとても刺激的でした。家族ともゆっくり過ごすことができましたし、久しぶりの海にジェシ―も妻も楽しんでいる様子でした。」 「それは良かった。」 ワトソン先生は何かを手元の用紙に書きながら相槌をうった。 「旅行中は何か気分の浮き沈みはありましたか?突然、不安になったり動悸を感じるような。」 「いえ、別段。旅行中も何度かあの事件のことを思い出すことはありましたが、特に思い悩むことはありませんでした。あれはしかたないことだ、自分は責務を果たしたと思っています。」 あの事件で俺は軽いPTSDだと診断されたが症状は1週間ほどで改善された。 それは家族や先生のおかげであるし、訓練時代のソルジャースピリッツによるものも大きいだろう。 「そうですか。」 「それで、来週からの復職の件なのですがいかがでしょうか?」 「このご様子であれば来週から復職していただいても問題ないと思います。私からお伝えしておきましょう。」 「ありがとうございます。」 俺が作戦を離れている間にアサラドについて進展があった。 撮影された娘はアサラドの娘であることが判明し、あの施設にはアサラドの家族が潜伏していることが分かった。 またアサラドは定期的にこの家に滞在していることが確認され、調査以来はじめてアサラドの姿を捉えることができた。 そして軍はアサラドが訪れる時間を狙ってこの施設を爆破することを決定した。 MELAは決して一枚岩の組織ではない。 アサラドというカリスマが統率することでその体制を保っているが、もとを辿ればMELAの成員の多くは地方に点在する小さな反乱分子の寄せ集めでしかない。 統率者と物資供給源を失えば、MERAを制圧することは難しいことではない。 そして作戦当日。 アサラドを殺害すべく基地を旅立ったUCAVは中東の灼熱の太陽の中を旋回していた。 20分前にアサラドを乗せた車が到着し、現在は施設内にアサラドと妻、息子2人と娘1人、そしてテロリストが7人いることが確認されている。 作戦室にはグラ―ニン少佐をはじめ、多くの上官が同席していた。 「発射準備。」 グラ―ニン少佐の指令が下る。 その異様な空気に緊張した心持ちでスティックを握る。 俺は施設に対して照準を合わせた。 「発射準備。ターゲットロック。」 「…発射。」 俺はミサイルの発射ボタンを押した。 ミサイルは火を吹かし一直線に施設へと向かう。 「…着弾まで5、4、3、2、1、着弾。」 爆発の閃光とともにヘルブラストの業火は施設を吹き飛ばし、周囲の植え付けられた樹木や駐車していた車も全てを無に帰した。 施設は骨組みだけが残り、どす黒い煙と火柱が上がった。 上官たちから拍手の音が聞こえた。 他の隊員たちもつられて拍手をする。 俺も拍手する。 みんな任務達成を喜んでいる。 アサラドが死んだことを喜んでいる。 モニターに映った施設”跡”をもう一度見る。 アサラドは痛みを感じるヒマも無く絶命しただろう。 それほどまでに強烈な爆風と熱だ。 ふと、拳銃で撃ちぬいた強盗のことが頭を過ぎった。 あの時、俺はひとりの男を殺すことを躊躇った。 そして今、俺は12人のテロリストと民間人を殺した。 あの拳銃の引き金は重かった。 しかし、このスティックのボタンは軽かったのだ—。 FIN
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