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『あの娘のことで相談が……』
「すみません。俺は娘さんの担当降りちゃったんで、そういった事は現在の担当の方に相談してもらわないと」
『娘が貴方じゃないと嫌だって騒いでまして……。一度様子見に来てもらえませんか?報酬は直接お渡ししますので』
「……わかりました」そう言われてしまった以上仕方がない。
後日俺はまた少女の家に向かうことになった。
インターホンを鳴らすと少女の母親が出迎えてくれた。
部屋に通されると、そこには布団を被っているであろう少女がいた。
「私はリビングにいますのであとは頼みました……」と母親はすごすごと部屋から出ていく。俺はため息をついて少女に近づく。
「体調悪いなら帰ってもいいかな?」
「やだぁ!」
「わがまま言わないでくれよ……」と言いつつ俺は少女の隣に座る。
しばらく沈黙が続く。
「……ねぇせんせぇ」と少女は口を開いた。
「何?」「……ごめんなさい」「いきなり謝られても困るんだけど」
「ごめんなさい」少女は繰り返し言う。
「ちゃんと説明してくれないと分からないよ」
「……」再び黙ってしまう。
「……別に怒らないから話してくれないか?」優しく声をかける。
「……ほんとに怒ってない?」と少女は恐る恐る顔を出す。
「本当だよ」と俺は笑いかける。
「……私、今まで嘘ついたの」
少女はぽつぽつと喋り出した。
「先生のこと好きだったのに照れくさくて馬鹿にするような事ばっかり言って」
「……うん」俺は相槌を打つ。
「それで先生が復習プリント出したときに、間違えて私が馬鹿だったら先生が残ってくれるかと思って……」
「……うん」
「だからわざと間違えるようにしたの……」
「……そっか」「ごめんなさい……」
「もういいよ。過ぎたことだし」
「……許してくれる?」
「……そうだね。じゃあこうしよう。俺も君に酷いことを言ってしまったからおあいこだ」
「……うん」少女はこくりと首を縦に振る。
「これからは真面目に授業受けてくれる?」「頑張る」
「よしじゃあまた次からは俺が来るね?」
「先生大好き!」少女は俺に飛びつく。
「はいはい。わかったから離れて……」
「やー!」
「離れろ!」
「先生冷たい!」俺はなんとか少女から抜け出し、母親にまた家庭教師と来てくると説明した。「……よろしくお願いします」
「はい。任されました」そうして俺はまた家庭教師として頑張ることとなった。
―――
後日俺は家庭教師として少女の家に訪問していた。
「ねぇ」
「なぁに?♡」
「近くない?」「えぇ?そんなこと無いと思うけどなぁ」
そう言いながら彼女は俺の腕に抱きついてきた。
「ちょっと!離してくれ……」
「先生恥ずかしがってるぅ~可愛い♡」
「……」俺は無言で彼女の腕を振りほどいた。
「あぁん。せんせつめたいよぉ」と言いながらも全く反省していないようだ。
「……女の子ならもっと恥じらいを持ちなさい」「だって先生にだけだもん」
「そういう問題じゃないから……。とにかく勉強するよ」
「はぁい」とやる気のない返事が返ってくる。
「この前やった小テストから始めるよ」
俺は前回同様、彼女に50点の小テストを解かせることにした。
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