うるさい隣人

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「うるさいって言ってるでしょ!」 1週間ほど前に隣に引っ越してきた住民がハズレだった。 挨拶もしてないし、生活時間帯が違うのか顔を合わせる機会も無いので どんな人かは知らない。 頻繁に聞こえてくる声から、赤子とその母親らしき女の存在が確認できる程度だ。 その女が、まあうるさい。 ヒステリックによく喚く。 「いい加減にしてよ!」 甲高い声で女が叫び、何かが壁にぶつけられる音が強く鳴る。 続いて響くのは、赤子の鳴き声。 仕方ないことなのだが、これがまた独特の周波数で俺の耳を攻撃する。 仕事で疲れて帰ってきて、これを聞かされると疲れと苛立ちが募るのだ。 「うるさいうるさいうるさいうるさい」 赤子の泣く声に合わせるように女も喚く。 声の感じからして若そうだし、育児ノイローゼにでもなっているのかもしれない。 父親らしき男の声を聞いたことは無いので、シングルマザーなんだろうか。 何にせよ、俺には関係の無いことだが。 とにかく、毎晩聞かされる怒鳴り声は何とかしてほしい。 「私が悪いって言うの? 何で私ばかり責められなくちゃいけないのよ!」 女が更に喚く。 それに伴い、壁を叩く音やガラスの割れる音なども響いてきた。 虐待でもしてるんじゃないか、と不安になった。 が、俺は面倒なことには関わりたくない。 下手に通報して逆恨みされるのもごめんだ。 それに、これだけ騒がしいと他の誰かが通報していてもおかしくない。 「あああああああ……! 許して、もう許してよおおお!」 女が叫びながら泣き出した。 大変だなぁ、と同情ぐらいはしてやるが、もう少し静かに嘆いてほしい。 そんなことを思いつつ、俺は就寝した。 不思議なことに、夜中はずっと静かだった。 赤子なら夜泣きぐらいしそうなものだが。 でもまあ、赤子が静かなら女も静かなので、俺としては好都合だ。
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