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(せっかく静かに暮らしていたのに、隣人があれじゃあな。また引っ越そうかな)
会社帰りの暗い道を憂鬱な気分で歩く。
これから先もずっと、
あの女の甲高い怒鳴り声に悩まされるのかと思うと心の底からうんざりした。
遠くないうちに引っ越すことを真剣に考えながら帰路につく。
そうして、自宅アパートに辿り着いた時、そこに妙な人だかりがあることに気付いた。
近隣住民が集まり、アパートの周りを囲っている。
誰もが困惑顔で騒ついていた。
更に、赤色灯を点けたパトカーが停まっている。
これは穏やかではなさそうだ。
(何があったんだ?)
人だかりから少し離れた場所で、俺は様子を見る。
すると、制服警官に両脇を抱えられて、女がアパートから出てきた。
「えっ⁉︎」
俺は絶句した。
その女は、一年前に別れた彼女だったのだ。
酷くやつれて憔悴していたので、付き合っていた頃とはだいぶ印象が異なるが、確かに彼女だった。
手錠をかけられた彼女がパトカーに乗り込む。
「うっ……」
その際、一瞬だけ彼女がこっちを見た。
無表情だったが、やけに恨みがましい目をしていた。そんな気がした。
そうして彼女が連行されていく様を、俺はただ呆然と眺めていた。
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