11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「違う違う違う違う」
俺だってそうだ。無関係な野次馬の一人だ。
一年前に彼女と別れた後、彼女と関わりたくなくて俺は全ての連絡先を絶った。
だから、その後の彼女に何があったのかなんて知る由もない。
でも、何となく想像はつく。
彼女は他の誰かと付き合って、交際相手の子供を身籠った。
しかし、交際相手には逃げられた。
一人で子供を産んだものの、とても育てられない現実に困り果てた。
そして、殺した。
きっとそんなところだろう。いや、そうに違いない。
殺された赤子の父親は──俺には関係ない。
そうだ。俺には関係ない話だ。
「関係ない。関係ない。関係ない。関係ない」
俺は関係ない。
俺には関係のないことだ。
「関係ない関係ない関係ない関係ない」
静かになった部屋の中で、俺はひたすら呪文のように唱え続けた。
そんな中、どこからか赤子の声が響いてくる。
「うるさい」
その声はどんどんな大きくなる。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい」
その声は止まらない。
「いい加減にしてくれ!」
誰もいないはずの隣室に向かって、俺は怒鳴った。
「うるさい!」
(終)
最初のコメントを投稿しよう!