眠れぬ日々を 乗り越えて

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 記憶する限り私はゆっくり眠りについたことがない。  特に音と光には常に悩まされていたような気がする。  戦中、祖父は徴兵を避けようと軍の車のメンテナンスの仕事をしていた。  そのため家は今もトラックが多く通る国道沿い。  電車が1時間に1本しか通らないど田舎にありながら、夜通し車の音と光に悩まされる。  アイマスクや耳栓は翌日のアラームを聞き損ねるので使えない。  家族はそんな中、信じられないことにぐっすり眠る。  私は生まれてからずっとこの環境にいるにもかかわらず、大学で東京へ上京して生家を離れる日まで、とうとうこの環境に慣れることはなかった。
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