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「そんな馬鹿な!」
彼は驚いた。無論俺も。あの告白ノートはクラスの中だけで回したのだ。それなのに該当者が何故いない。
「間違いないんですか?」俺は確認する。
「私の力不足かもしれませんが、間違いないと思います」
重たい沈黙。希望の糸がぷつりと切れた。
「そんな筈ない。クラスの誰かが書いた筈だ」
彼は呟く。そう、間違いなく誰かが書いたんだ。しかし、彼女はいないと言った。これはどう言う意味を持つ?
ふと、まだ試していない可能性がある事に気づいた。しかし、これはとても気持ちのいいものじゃないし、ましてはこれがあっていると更にややこしくなる。けれど。
「なぁ、先生から貰ったメッセージがあったよな」
「全員に配っていた奴だろう?律儀にも手書きだったよね。本当に優しい先生だったよ」
いい終わってから彼は俺がしようとしている事に気付く。俺は無言で立ち上がると2階に上がり、放り投げていた先生のメッセージを持ってきた。
彼女が鑑定している間。俺たちは話さなければならなかった。道筋を立てたいといいだしたのは彼なのだから。
「なぁ、言ったよな。納得出来る推測が欲しいって。思い付いたんだ。話してもいいか?」
彼は頷いた。脱力した彼の相貌は全てを悟ったようだった。
「結論から言う。鶏を殺したのは俺たちの担任だった。そう推測する」
「でも、先生が鶏を殺す理由なんてない。まさか快楽殺人者と言うんじゃないだろうね」
俺は首を振った。3年間一緒に過ごして、そんな人でない事は分かっている。だから、もし先生が犯行に及んだのだとしたら。
「先生は鶏を殺した。しかし、それは事故だった」
「事故?」
「まず先生は最終確認の為に小屋に入る。そしていつかは分からないが先生は誤ってで倒れたんだ。その時、運悪く鶏を潰してしまった」
これが鶏を殺した理由。
「ここで先生は一度職員室に帰った。いつまでもいる訳にいかないからな。そこで誰かに罪を告白しようとしたんだと思う」
しかし、先生は誰にも打ち明けなかった。寧ろ隠蔽を図った。慣れない殺しをして自分以外の存在しない第三者に罪を被せる為に。彼は納得しかねる。
「どうして誰にも言わなかった?あの先生なら自分の罪にも向き合って乗り越えられる筈だ」
「事件が起こったのは大体7月。先生はまだ新人の担任だった。考えてみろ。まだ信用の固まっていない状態で動物を殺したら、そんな人を果たして生徒は先生と呼べるか?」
彼は俯いた。それでもと彼は呟いた。
「乗り越えられたんだ。先生なら」
そして彼はまた驚いた。
「ちょっと待ってくれ、あの靴は、あの醜悪な物は先生残したのか?」
正直ここが今回の最大の間違いだった。
「俺たちは間違えたんだよ。象の事件と鶏の事件は恐らく繋がっていない。先生は鶏を殺した。だけど象の人形なんて置いちゃいないんだ。誰かが先生の事件を乗っ取って肥大化させてるんだ」
そいつは第一発見者より現場に駆けつけた。何故連続した犯行に見せ掛けたかは分からない。少なくとも邪な考えで行動したに違いなかった。
「それじゃあ、こう言うことかい。結局誰が靴を入れ替えたか分からない」
俺はその問いに答えることが出来なかった。
彼女の鑑定の結果。先生が書いた事に間違いないそうだった。推測がどう転ぼうとこの事実だけは覆りそうにない。
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