突入のとき

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突入のとき

 4人は車1台で来たことを後悔した。夜中までここを動けない…… 仕方ないので、2人体制で動くことにする。  まず2人がタクシーで店がある所まで行き、そこで昼食を済ませ、用を足して夜用の食料を調達することにした。その後、戻って残り組と交代する。  当然結羽は残ると主張するので、翔も残る側に付いた。 「なるべく急いで戻りますから」と犬一と虎太郎がすまなそうに車を離れていった。  夜中まではたっぷり時間がある。兄弟は背もたれを倒すと世間話を始めた。 「兄貴、高峰とはうまくいってる? 」 「うん、順調だよ。彼女、随分明るくなってる。元々、努力家だし頭もいいから、アニマルセラピストは国家資格なんかないから、勝手に名乗ってもいいくらいの職業さ。だけどさくらは民間資格をとって、あちこちでボランティア活動なんかして活動してる。聞いたと思うけど、今後俺の事業計画の中心になってくれるだろうね」 「あいつの優秀さは折り紙付きだよ。そういう意味では兄貴の人を見る目は確かだな」 「優秀さだけでなくて、美人で人柄もいい」 「なんだそれ。べた惚れじゃないか」  結羽が半身を起こして翔をからかった。  そんな弟を横目で見ながら「べた惚れで悪いか?」と兄が薄笑いを浮かべている。  反撃してこない兄に肩透かしをくらって、結羽がまた半身を背もたれに戻す。 「結羽、お前だって美猫さんのことになると好きが駄々洩れだよ」  翔の言葉に「! 」と言葉をのみ込んだ。  やがて素直に「俺、駄々洩れだった? 」と尋ねる。  「うん。だけど洩れてなくても、皆知ってるから、気にするな。問題は本人のお前がしっかり自覚してないことだよ。もっと、相手にその気持ちを伝えないとダメだよ」  
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