突入のとき

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 そうだよな… 今回のことで嫌というほど美猫への感情を思い知った。好きという想いは言葉だけでも行動だけでも伝わってなかった。  美猫が、こちらの本気を確信してくれた時だけ伝わったと言える。これまでは匂わせたり、言い訳をしたりして、逃げ道ばかり用意していた。  もし、今夜救い出せたら、ちゃんと伝えよう。いや、伝えようじゃなくて絶対、伝える!  ガンバレヨ! 翔が隣で呟いた。  えっ! 俺テレパシー、使ってないのに…… 「ハハハ、驚いてるな。兄弟だから、何考えてるか、能力関係なく分かるんだよ」 「兄弟だからじゃないだろ、兄貴だけだろ分かるのは」  結羽が心を読まれたのが口惜しくて文句を言う。 「人一倍弟思いだからな、俺」 「うん、そうだな」  ぷっ、翔が吹き出した。 「お前、そこは突っ込まないのか? 」 「突っ込みようがないだろ、真実だから」 「気持ち悪い! とか言えよ。答えを用意してたのに」  翔がニヤニヤしながら、身体を結羽に向けた。 「気持ち悪い! 」兄の希望に応えて言ってやった。 「ありがとう。大好きだよ」 「キッショ!(気色悪いの略)」 アッハッハッ 翔がお腹を抱えて大笑いする。 「もう、結羽の答えホント最高! お前だけだよ、会話をここまで楽しませてくれるの」  要するに会話で遊ぶ相手として適材ってことらしい。
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