突入のとき

7/10
前へ
/304ページ
次へ
 リビングの扉は青木が開けたまま出てきていたので、伏子とチワワはすぐに赤木の元に辿り着いた。  訳が分からず固まっている赤木。  伏子がチワワに赤木を指さし「Go! 」と命令する。  チワワは迷うことなく赤木に飛び掛かった。 「うわぁぁ! ぎゃぁぁぁ! 助けてくれー 」何が何だかわからず、ただただ悲鳴を上げる赤木。  チワワは顔めがけて何度も飛びつき視界を遮っている。  周りが見えないことで赤木の恐怖は増幅していた。  そこに結羽が追いつく。  訓練されているチワワは、ケガを負わすことなく恐怖だけを煽っている。  結羽は赤木に近付くと伏子に見えないように一発食らわした。 「美猫さんのいる部屋の鍵はどこだ」  赤木は慌ててポケットから鍵を取り出すと、投げてよこす。  それを掴んで結羽がリビングを飛び出して行った。  遅れてやって来た他の仲間が赤木を取り押さえ、龍矢が手錠をかけた。 「社長ー! ここです。私、ここに居ます」  美猫が叫んでいる。  その声がする部屋にはチェーンが巻かれていて、そのチェーンの鍵を結羽が手にしていた。  気が焦ってガチャガチャさせながらチェーンを取り外し、ドアを開けた。  開けたドアの真正面に美猫が立っていた。涙でぐしょぐしょの顔。  結羽は思わず美猫を抱きしめていた。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加