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闘い終わって…
解放された安心からか、お腹が満たされた満腹感からか、美猫がウトウトし始めた。
外は、何事もなかったかのように人や車が行き来している。
昨日までの不穏な日々が嘘のように平和だった。
すやすやと眠る美猫の顔が眠り姫のようにきれいに見えた。
本当は眠らされてから顔も洗っていないはずだし、髪もとかしていないというのに。
途中で良子さんに電話を入れる。
「良子さん、今から美猫さんを連れて帰ります。安心してください、無事で無傷で取り返しましたからね」
結羽の報告に、受話器の向こうで「ぅわん、わ~ん」と泣き出す良子さん。
「奥様に、うっ、うっ、お伝え・・して・・きます」
「はい、お願いします」
もらい泣きだろうか、結羽まで涙が止まらなくなった。
車はスムーズに白水家の駐車場に着いた。
結羽の脳内に一斉に仲間の声が飛び込んできた。
【結羽! こちらも一件落着したぞぉ】
【結羽さん、どこですか? 鬼黄の家、制圧しました】
【結羽さ~ん、全員逮捕したよ】
【美猫と無事に帰り着いたかぁ~】
皆の声が混ざって、頭の中がことばでいっぱいになった。
それでも、うるさくはない。
【いま、駐車場に着いたところです。このまま母屋に運んでゆっくり休ませます】
結羽が返事をする。そろそろ起こそう。
「美猫さん、起きて」
声をかけるも返事をしない。聞こえなかったのかと思って、耳の傍まで顔を近づけた。
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